入れ歯専門医による入れ歯安定剤の選び方
入れ歯の調子があまり良くないので入れ歯安定剤を使っている、または使おうと考えている人もいることでしょう。市販の入れ歯安定剤にはさまざまなものがあります。いろいろありすぎて、自分に合った入れ歯安定剤がいまいち分からないという人も多いのではないかと思います。この機会に入れ歯安定剤の選び方、また使い方における注意点などについて知っておきましょう。
目次
入れ歯安定剤はどんな時に使う?
入れ歯安定剤は入れ歯の調子が悪い時に状況に応じて使用します。もちろん入れ歯の調子が良い時に使う必要は全くありません。入れ歯の不具合は主に、当たって痛い、外れてしまう、入れ歯と歯茎の間にものが入り込む、というようなものですが、このような不具合は入れ歯安定剤を使って、歯茎と入れ歯をより密着させることで改善できることが多いものです。
ただし、もちろん入れ歯安定剤をずっと使い続けるというのは好ましくなく、不具合は歯医者で調整をするなど、根本的に問題を解決する必要があります。そのため、入れ歯安定剤はあくまでも歯医者に行けないような場合に、一時的に入れ歯を安定させる用途で使うもの、ということを覚えておきましょう。
入れ歯安定剤のタイプとそれぞれの特徴
入れ歯安定剤のタイプはまず、くっつける方式として、粘着タイプとクッションタイプに分けられます。そして粘着タイプはさらに、粉末タイプ、クリームタイプ、テープタイプに分けられます。
粘着タイプ
粘着タイプは歯茎と入れ歯の隙間がそれほどない場合に向いています。唾液などの水分と混ざると、糊のような粘着力を発揮します。保険のレジン床義歯、保険外の金属床義歯のいずれでも使用できます。
1.粉末タイプ(パウダータイプ)
入れ歯が濡れている状態のところにふりかけます。粉末のため薄く均等に広がり、違和感が少ないのが特徴です。使用後取り除くのが簡単です。
商品名
ポリグリップパウダー無添加(アース製薬)
新ファストン(ライオン)
2.クリームタイプ
チューブに入っている柔らかいクリーム状で、入れ歯の上にしぼり出します。指で広げなくても薄く均等に伸び、粘着力が大きく、長持ちするのが特徴です。入れ歯についたクリームは比較的簡単に取り除くことができますが、口の中についてしまったクリームはなかなか取りにくい場合があります。
商品名
新ポリグリップ(アース製薬)
タフグリップクリーム(小林製薬)
新ライオデント(ライオン)
3.テープタイプ(シートタイプ)
使用する目的は上の2つと同じですが、携帯用として便利で、使用方法も簡単です。水に濡らしてから入れ歯に貼って使用するため、水が必要です。欠点として、入れ歯の上で均等に広がらないことがあり、その結果噛み合わせがずれてしまうことがあります。
商品名
タッチコレクトⅡ(シオノギ製薬)
シーボンド(エーザイ)
クッションタイプ(ホームリライナー)
主に総入れ歯に用いられます。保険外の金属床には使えません。入れ歯と歯茎の間の隙間がある程度大きい場合に向いており、ゴムのようなクッションにより、歯茎と入れ歯の隙間を埋めて、陰圧にすることで吸着させます。粘着タイプに比べてベタつきが少ないため、汚れにくいですが、入れ歯から剥がしにくい傾向があります。また、均等に広がらないことがあり、使い続けることで噛み合わせがずれてしまったり、あごの骨が吸収して痩せてしまったり、あごの関節に異常が起こる場合があります。
商品名
タフグリップ(小林製薬)
ポリデント(アース製薬)
新ライオデント(ライオン)
クッションコレクト(シオノギ製薬)
コレクトソフトA(シオノギ製薬)
入れ歯安定剤を使う際に知っておきたいこと
入れ歯安定剤は即効で効果が出やすいことから、安易に使われがちです。しかし、合わない入れ歯を安定剤でだましだまし使い続けることによって、噛み合わせが狂ってしまうことがあります。その結果、あごの骨が急激に痩せてしまい、あごの骨が平らになって入れ歯が一生安定しなくなる場合もあります。また、使い続けることで細菌が繁殖し、義歯性口内炎や誤嚥性肺炎などを引き起こすリスクもあります。そのため、独断での長期的な使用は避けましょう。
まとめ
一般的に、歯科医師はあまり入れ歯安定剤に肯定的ではありません。それはぴったりと合った入れ歯を使っているならその必要はない、ということと、入れ歯安定剤を使い続けることでさらなる不具合が出る危険性を知っているからです。ただし、短期的に使う分には通常問題ありません。使用する際は歯医者に行くまでの一時的な使用にとどめておくようにしましょう。
カテゴリー:入れ歯ブログ 投稿日:2017年3月20日